スタンリー・キューブリック対談

時計じかけのオレンジ、2001年宇宙の旅、フルメタル・ジャケット
神田桂一 2023.12.05
誰でも

今週は、古くからの友人で、最近名前を隠して「楽園の地図」という変なペンネームで書いているライターと、スタンリー・キューブリックの映画について話し合いました。楽園の地図というのはペンネームであり、旅をテーマにしたメールマガジンのタイトルでもあるそうです。よかったら登録してみてください。なお、今回の対談はコラボで、向こうでは私、神田が台湾の魅力やバックパッカーの沈没について語ってます。

楽園の地図
1981年生まれ。ライター、編集者、元経営者。現在は不動産と株の投資で隠居生活を堪能中。仕事がないことをいいことに毎年3,4ヶ月の旅に出ている。海外の映画や音楽に造詣が深い。「東洋経済オンライン」でも執筆中。theLetterのメールマガジン「楽園の地図」→ https://rakuen.theletter.jp/

やっぱり時計じかけのオレンジは最高だ

 自分のメルマガのタイトル忘れましたけど

 神田の朝は・・・

 そうそう。神田の朝はスーパー早い特別編として、「楽園の地図」さんにゲストで来てもらって、キューブリック映画の魅力について語るということで。

 神田さんとは十年来の付き合いになるライターの「楽園の地図」ですけど。キューブリック大好きですよ。

 最近、Amazonプライムでキューブリック映画が、全部ほぼほぼ無料なんです。だから暇があったら見るんですけど。それで楽園さんも好きだったことを今思い出して。キューブリック映画について語ったら面白いんじゃないかって。作品だと何が好きですか?

 やっぱりキューブリックと言えば時計じかけのオレンジでしょう。

時計じかけのオレンジ(1971)→Amazonプライム

 どんだけベタだと言われようと時計じかけのオレンジが一番いいんですよ。

 確かに。20歳ぐらいの時にTSUTAYAでいろんな作品見てる中で出会ったんすけど、やっぱあれは衝撃がすごかったっすね。映画の衝撃部門では、いまだにあれが生涯1位かも。

 なんだかんだすごいでしょ。

 でも逆に言えばよくぞ名作として残ったなって感じもしますよね。結構ひどい話じゃないですか。

 ひどすぎますよ。だって性描写もあるし、暴力も殺人もあるし。社会風刺もあるし、全部詰め込んで、全方位に喧嘩売ってるみたいな。

 キューブリック時代にツイッターがあったら最悪ですよね(笑)。よかったですよ、ツイッターが出る前の時代の人で。(キューブリックは1999年没)

 本当にそうですよ。めちゃくちゃ叩かれてるでしょうね。

 だから多分ああいうタイプの作品はもうできないってことですよね。制作費も集まらないだろうし。

 最後は左翼があの悪い主人公を利用するみたいなオチじゃないですか。

 確かに確かに。71年だけど、めちゃくちゃ現代的な物言いですよね。

 未来を予測していたというか。しかも舞台装置というか、なんか全部オシャレじゃないですか。今でも通用するセンスというか。あれもすごいなと思うんですよ。

 確かに。

 音楽の使い方もすごい。

 確かに。変なシーンでクラシック使ったりして。

 ベートーヴェンの「第九」ですよね。

 「第九」が物語のキーなんですよね。

 そうそう。

 あのヤバい主人公、アレックスね。アレックスは第九が好きなんですよね。そもそも殺人鬼なのに第九が好きっていうのがもうヤバいんですけど(笑)。

 ヤバい。

 あんなに悪いやつなのに、クラシックを嗜む教養があるんだなっていうヤバさがね。なんなんでしょうね?

 そうそう、そうなんですよ。

 やっぱ20年以上前の視聴なのにまだ覚えてるもんな。映画って結構前に見たものってもうほとんど忘れちゃうんですけど、あの映画のことは結構覚えてるな。

 やっぱ画が衝撃的なのかね。

 神田さんは何年ぶりぐらいにAmazonプライムで見たんですか?

 僕も十数年ぶり。やっぱすごかったすね。近未来的な、舞台とかも全部すごい今見ても新しかったし、うん。第九とかさまざまなモチーフをうまく使ってると思ったし。コマ送りとかも斬新だったし、早送りになるシーンも斬新だったし、スローモーションのシーンも音楽を上手く使いながら。

 あれは一応原作となる小説がありますよね。

 ありますね。

 なんか揉めたらしいっすよ。小説の原作者と。

 そうですね、ラストで揉めたらしいっすね。

 でも小説は、少なくても日本ではそんな読まれてないですよね。圧倒的に映画の方が日本でも世界でも見られてるし、金字塔ととして残ってる感じありますよね。

 やっぱあの気持ち悪い結末がありきというか。

 いや見てほしいなみんなに。

 黙ってみてもらいたいですね。僕らの言うことを聞いて。あれを一度部隊で小栗旬が具体化して、時計じかけのオレンジ舞台版として小栗旬がアレックスを演じるってなった時に、マルコム・マクダウェルを超えられるのかと思いましたよ。よくあれをやる気になったなって。

 小栗旬はそんなことやってたんすね。

 結構前にやってたんですよ。その勇気に乾杯って感じです。

 そういえば恥ずかしいこと思い出した。

 なんですか?

楽 時計じかけのオレンジを20歳で観た僕は衝撃を覚えて。内容もすごくいいんですけど、インテリアとかすごくオシャレで、原色の派手な色使いとか宇宙的な雰囲気とかが出てくるじゃないですか。あれみてこれだと思っちゃって。部屋を原色とかで彩るようになったんですよ。

 いいじゃないですか。キューブリックは普遍ですから。今見てもかっこいいですから。何をしたんですか? 蛇を飼ったとか?

楽 いやそれはないですけど、真っピンクな置物を置いたりとかしてたんですよ。それが評判悪くて。「あいつは壊れた」って言われるようになっちゃって(笑)

 みんなはキューブリック見てないですからね。

 でも20歳ぐらいの時ってそういうもんじゃないですか。衝撃を受けたら全部そっちにいくというか。あれは恥ずかしかったな。

 僕も前の彼女の冷蔵庫にアレックスのステッカー貼ってる人いたな。他は好きな作品ありますか?

ジャック・ニコルソンのイカれっぷりに注目!「シャイニング」

 そうだな。全部一度は見ましたけど。難しいけど、まあ、シャイニングかな。

シャイニング(1980) →Amazonプライム

 やっぱシャイニングですよね。ジャック・ニコルソンですよね。

 そうそうニコルソンです。あれはだから、キューブリックは本当に性格が悪いですよね。なんていうか、追い込むというかね。何かへの怒りなのかな。何が原動力であんな気持ち悪い問題作ばかり作ったのか謎ですけど。ひどい目に遭う話が多いですよね。

 いや本当そうですよ。

 神田さん一時期Facebookの画像でこの映画のワンシーン使ってましたよね。

 そうです。

 子供が三輪車漕いでるやつ。あれ子供が三輪車漕いで屋敷をぐるぐる回ってるだけなのに、なんであんな怖いのかなって。不思議ですよね。

 そうなんです。あれはWeb本の雑誌っていうサイトがあって、映画レビューコーナーがあるんですけど、シャイニングの映画レビューを書いたんですよ。マリオカートかと思ったっていうリアリティを書いたんですよ(笑)。それのジャケット写真を使わせてもらって。

 なんだろう。カーブの感じがマリオカートっぽいかもですね。

 シャイニングも見てほしいですね。ニコルソンの怪演ぶりというか。ニコルソンは他の映画もすごいんだよね。カッコーの巣の上でとか。

 はいはいはい。

 あれはもう正常なくせに精神病院に入って、精神病者を復活させていくっていうすごいヒューマンドラマなんですけど、ジャック・ニコルソンが入るとこれが違って見えるっていうすごい映画なんですよね。

 そういえばそうでしたね。

 最後はロボトミー手術を受けて自分が狂ってしまうっていうすごい映画なんですけどね。

 昔の映画はこうやってあらすじを話すだけでももうヤバいって映画が多かったですよね。今の基準だとアウトなんじゃないな。

 そうかもしれないですね。Amazonプライムで見ようとしたら現在見れませんってなってて。それが問題かどうかわからないですけど、見れない。

 権利的な問題じゃなくて?

 多分倫理的な問題だと思う。だからね、ジャック・ニコルソンが見れなくなる日も近いかもしれないっすよ。

 もうあの顔が倫理的にNGだと(笑)

 このままポリコレが進んだら、ジャック・ニコルソンが見れなくなるかもしれないっっていう。悲しい状況が訪れてもおかしくないじゃないですか。

 時計じかけのオレンジもそうですけど、あの頃、アメリカンニューシネマというジャンルが起こって、バッドエンドが流行ったんですよね。イージー・ライダーだかもそうだし。今、バッドエンドってほぼないじゃないですか。アメリカも、それ以前の映画はハッピーエンドばっかりだったんですよね。もう無理矢理でもハッピーに終わる感じ。それがアメリカ全体が鬱になってバッドエンドの映画を作り出すのが70年代。

 ベトナム戦争の影響でね。

 そういう文脈があって、ここまで名前があがってる映画は全部その中で作られたものなんですけど、当時はそれがすごいスタイリッシュというかね、カッコよかったんですよ。今見るとなんでこんな気持ち悪いんだろうとか救いがないんだろうっていうのはあるかもしれないですけどね。当時の時代の文脈がわからないとね。

 なるほどね。

 それに巻き込まれたのが役者のジャック・ニコルソンっていう(笑)。カッコーの巣の上然りシャイニング然り。

 見れなくなるかもしれないんで。

 そう考えると俳優って不思議な仕事だなって思いますよね。

 その時代時代に合わせてなりきらないといけないですからね。

 本人がやりたいとかって思ったのかどうかわかんないけど、なんか発注が来てやってるわけじゃないですか。今回は精神病院に潜入する役ですとか言われて(笑)。

現代的なテーマを予見していたフルメタル・ジャケット

 あと僕はね、フルメタル・ジャケットが好きですね。

 そうだ、ニコルソンじゃなくてキューブリックでした。

フルメタル・ジャケット(1987) →Amazonプライム

 フルメタル・ジャケットは奇しくも今っぽい話ですよね。現代的なテーマだなっていうか。

 あれは戦争映画なんだけど、なんていうか組織論ですよね。

 組織が狂うって話じゃないですか。それって現代もすごくある状況というか。いつの間にか全員やばいみたいな。

 あれはパワハラの話ですからね。ずっとパワハラ。あれもどうなんですかね、今劇場で流したらどういう反響があるのか。

 あれもツイッターとかあったらやばいでしょうね。

 「映画を見てPTSDになりました」とか続出しそう。

 あれも性描写もあるし。暴力っていうかピストルで殺しまくってますから。殺人も暴力も。ひどい映画ばっかですね。

 キューブリックって酷いっすよね。

 言葉の暴力もあります。口汚く罵りまくって、ユダヤ豚もなんとか豚とかも平等に価値がないみたいな発言とかね。あれ悲しいのが、微笑みデブって呼ばれてる奴がいるんですけど、なんの能力もないけど最後射撃の能力だけいいんですよ。

 僕は結構前に見たので覚えてないっすね。

 射撃の能力だけ高い微笑みデブが、「やっとお前の取り柄を見つけたぞ」って教官に言われるんですけど、もうその時はすでに気が狂っていて、教官を撃って、自分も自殺するっていう。せっかく取り柄を見つけてもらえたのにもうデブは精神病になってたていう結末だった。

 やっぱり今のロシアの戦争とかでも、同じようなことが行われてるんですかね?

 きっと行われてますよね。厳しいですね。デブはきっと今もイジメられてるんでしょうね。戦争映画とかみます?

現代はバッドエンドを許容できなくなっている

 最近は流石にあんまり見ないですけど、プライベート・ライアンとか。古い話ばっかりしてますけど。最近はそんなに戦争映画自体が減りましたよね。観客の許容力が下がってると思うんですよ。血とかいっぱい出るのも悲しいっていうか。

 なるほどね。

 そういうのあるんじゃないかな。そもそも最近、ひどい映画自体あまりないですよね。悪いことが起こっても、最終的には良くなったり、ハッピーな映画しか思いつかない。

 なんか最近でキューブリックの映画以上にひどい映画ありますか?

 ホラーとかだって別になあ。直接的な表現があるだけでその深層心理が怖いとか、キューブリック的な怖さじゃないじゃないですか。あれぐらいじゃないですか。ドッグヴィルの人。

 ラース・フォン・トリアーですね。

 あの人は結構やばいかもしれない。

 あの人は確かにひどい。

 あの人はSNS時代のキューブリックかもしれないですね。

 ギリギリセーフかアウトかの境目を試しています。ダンサー・イン・ザ・ダークとかもバッドエンディングの映画ですけど、あれも相当なんかみんなに鬱映画とか言われてますけど、僕は結構面白く見たんです。ミュージカルシーンとか楽しいんじゃんと思って。

 確かにね。だから、今は人間は弱っていてバッドエンディングを受け入れられなくなってるのかもですね。かつてはキューブリックの映画を観て、喜んではないだろうけど、面白いねと言ってたわけじゃないですか。

 キューブリックの映画はオスカーとかノミネートされてましたからね。時計じかけのオレンジもノミネートされていた。評価されたわけですからね。

 今は例えばパラサイトとか、韓国人は結構ダークな映画作るけど、パラサイトもそこまでひどくないしね。ギリギリ家族や恋人と見てもOK。最後は報われるし。

 キューブリック映画のようなひどさはないですよね。

 でもそうやってひどい映画を観たおかげで、分かったこともあるわけじゃないですか。どうしようもない悪とか、正義のフリして近づいてくる悪の存在とか、組織そのものが狂ってたらどうするのか、とか。そういう学校では教わらないことのいくつかを私は映画から学んだんですけど、今の人はどこで学ぶんですかね?

 教わってないんじゃないですか? だからちょっとひどい映画があるだけで問題になっちゃうんですよ。

 なるほど。あと、キューブリックといえば、2001年宇宙の旅ですよね。これも外せないっす。

2001年宇宙の旅(1968) →Amazonプライム

 あれも音楽の使い方がすごいですよね。

 あれ確かなんだっけな、謎な終わり方をするんじゃなかったでしたっけ?

 スターチャイルドっていう胎児みたいなのが生まれて終わりっていう。

 確か一人づつHALっていうコンピューターに殺されちゃうんですよね。

 HALが暴走して、宇宙に放たれていっちゃうんですよね。

 これもAIの暴走を彷彿とさせる、めちゃくちゃ現代のテーマですよね。自動運転車が暴走したりするような時代というか。

 完全に予見してます。

 1968年でこのテーマ設定はヤバいですよね。早すぎます。

 ヤバいっす。

 なんなら今やっと、時代がキューブリックに追いついてきたみたいな。

 そう、だから僕もこれ見直したんですよ。そしたらなんか宇宙船入るのに音声認証とかするんですよ。これ、現代と一緒じゃないかって。普通にテレビでテレビ電話で医師が診断したりするし。

 しかもあれ、68年だから当然CGじゃないという。あれ、最後に残ったあいつはなんで生き残ったんでしたっけ?

 HALを止めたんです。だから彼だけ生き残った。

 HALってIBMからアルファベットをひとつずらしたんですよね。

 そうそう。すごいなあ、キューブリック。

 2001年もそうですけど、未来が舞台のSF映画って結構好きで、キューブリックじゃ無いですけど、未来世紀ブラジルは見ました?

 わかります。見てないですね。

 あれ面白いですよ。発展しすぎて訳がわからないことになってる未来のブラジルが舞台なんですけど。完全にSFの世界を、よくぞCGなしであそこまで表現したなというのがすごくて。

 へえ。

 あれも機械や組織が暴走していく話です。2001年宇宙の旅と、テーマは通じてますね。

 結局、キューブリックを超える映画監督ってまじいないと思うんですよ。アイズ・ワイド・シャットはギリギリリアルタイムで間に合って、キューブリックが生きてる時にあの映画の公開を見れて嬉しかったです。

アイズ・ワイド・シャット(1999)Amazonプライム

 僕もほんとギリギリこれだけリアタイで見てる。なんか難解な映画でしたよね。僕はぶっちゃけよくわかりませんでした。

 変な映画であったことは間違い無いですよね。キューブリック節が出てたことは間違いない。

 今見ると違った感想になるのかな。見返してみたいですね。

最後にキューブリックと関係なく二人が最近見たおすすめ映画を紹介します

 神田さんは最近の映画は見ないですか?

 最近は結構見てる。100日間生きたワニとか。

神田さんの最近見た映画。 100日間生きたワニ Amazonプライム

 僕はそれはみてないです。よかったですか?

 すごいよかった。

 だいぶ炎上しちゃったんですよね、確か。

 炎上したことの方が有名になっちゃった。それは勿体無いですよ。70分ぐらいしかない短い作品なんでサクッと見れました。今はプライムで無料で観れるのでおすすめの1本となっています。あとはドライブ・マイ・カーも見ましたし。

二人が最近見た映画。 ドライブ・マイ・カー Amazonプライム

 僕も見ました。

 村上春樹原作、濱口竜介監督ね。

 アカデミー賞のインターナショナル(アメリカ映画以外の中での最優秀作品賞)獲ってるんですよね。

 監督が海外受けがいいんですよね。いい話ですけどね。

 心を閉ざした人が、最後に少し心を開く話ですよね。

 僕は救われたかったんだ、みたいな。

楽園の地図が最近見た映画。 エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス →Amazonプライム

 見てないそれ。

 カンフーものなんですけどね、結構面白かったですよ。これもアカデミー撮っててその繋がりですけど。

 おばちゃんが活躍するやつですよね?

 そうそう。これはね、僕らは40年間ぐらい映画や何かしらの映像を散々観てきた訳じゃないですか。それでもまだ見たことが無いような映像体験ってあるんだなって。

 へえ。

 まだまだ映画、というか映像にはやれることがあるんだなって思いました。

 そうなんだ。

 賛否あると思うんですけど、少なくても見たことがないという意味でオリジナルな映画だったな。

 それはちょっと見たいですね。

 気の弱い夫が出てくるんですけど、ジャッキー・チェンに顔は似てるんですが、別人です。で、本当にジャッキーにオファーしたらしいんですけど、断られちゃったんですよね。そこであの人をブッキングするんですけど、その結果、いい映画になってる気がしますね。

 ちょっと昔だけど、花束みたいな恋をした

花束みたいな恋をしたAmazonプライム

 いやこれはめちゃめちゃ盛り上がりましたよ。楽園さんのようなライターだったらめちゃくちゃ思ところがあると思います。

 ほんとですか?

 菅田将暉くんと、有村架純主演で、クリエイター志望の大学生が徐々に狂っていく。ライター必見の話です。いやマジで。菅田将暉くんがイラストレーター志望の大学生なんですね。で、2人の趣味が同じってことで出会うんですよ。今村夏子が好きとか、押井守が好きとか、そういうので気があって付き合うんですよ。菅田将暉くんがほとんど金にならないような安いイラスト仕事を受けてやってる訳ですよ。

 どこかにいるでしょうね、そういう人。

 2人とも就職活動してなくて。で、卒業するんですよ。菅田将暉もバイトしながらイラストレーターの仕事を受注してるんですけど、食えなくなってくるんですね。で、俺、とりあえず就職するわっつってイラストレーターは休日や土日にやるから心配しなくていいよって。でもだんだん就職した会社の仕事が忙しくなってくるんですよね。営業の仕事なんですけど。それで出張とか入って有村架純と一緒に観にいく予定だった演劇に行けなくなったりする。で、菅田将暉はどうせ再演でしょうとか言ったりして、有村架純はいやそういう問題じゃないでしょって口喧嘩になって。

 なるほど。

 家にサブカル本がいっぱい並んでるんですよ。AKIRAとかゴールデンカムイとかが並んでるんですよ。で、有村架純が新刊出たよとかいってゴールデンカムイ持ってくるんですけど菅田将暉はもうゴールデンカムイを読めなくなってるんですよ、忙しくて。忙しくて文系脳じゃなくなってるんです。

 はいはい。

 一緒に本屋をに行ったら、有村架純は今村夏子の新刊出てるよって見てるんですけど、その時菅田将暉くんは、自己啓発本のコーナーにいて、「人生の勝算」って本を手に取ってるんですよ。

 ディティールがすごいですね(笑)

 あるとき、「もう俺パズドラしかできねえんだよ!」って名台詞が出てきて。あれクリエイターの志望の大学生とかが見たら即死すると思うんですよね(笑)

 僕は最近はメルマガ「楽園の地図」があるからめちゃくちゃ映画見てるんですけど、タイ好きの神田さんにはタイの映画「プアン」を勧めたい。

プアン/友だちと呼ばせて →Amazonプライム

 この映画は本当にケチがつけようのない映画じゃないかな。僕らみたいな大人が見ても若者が見ても何かエモいものがあるだろうし、ひねくれた人も、ナチュラルに生きてきた人もなんかいい話だねって言ってくれそうな自信がある。最近、タイとか、ナイジェリアとかケニアとか、それまであまりノーマークだった国が結構いい映画出してきてるんですよね。メルマガでもケニアの映画とか紹介しましたけど。

神 へえ。そこまでチェックできてないですよ。

 プアンに関していうと、制作総指揮があのウォン・カーウァイなんですよ。ジャンルで言えば恋愛とか青春が詰まったロードムービーなんですけど。男2人が主役で、片方が癌で余命が少ないと。で、死ぬ前に、過去の恋愛を巡って後悔してることとかあるじゃないですか。あの時ああすればよかったのにな。みたいな。それをタイを車でドライブしながら過去付き合っていた女性に会っていって思いを伝えていく話なんです。あの時雑に振ったあの子は今何してるのかな、みたいなのとか。

神 面白そうですね。

 映像もいいし街並みもいいし。アメリカが舞台なら、きっと似たような作品はあると思うんですよ。でも舞台はタイなんで、新鮮に見れるっていうのはありますね。

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